「もうなんか早くインドネシアから出ないといけない。そう思ってますけどね。僕は」
こう話してくれたのは、インドネシア・ジャカルタで（執筆時点で）一番新しい日系サロン『ciel sowal』（シエル ソワル）のオーナー後藤さん。
ciel sowalさんがオープンしてまだ約1年半。
すでにそう考えている理由はどこにあるのでしょうか。
美容室があるのは、大きなショッピングモールや高級住宅が並ぶ、南ジャカルタのラジオダラムという場所。
前日の取材を終え、ホテルから徒歩圏内にあるciel sowalさんまでは徒歩で向かいました。
少しごちゃごちゃした交通量の多い幹線道路から少し入ると、そこは静かな高級住宅街。
その一角に美容室はあります。
サロンの入り口。一見強面ですが、気さくな守衛さんでした。
美容室横にある詰所にはセキュリティスタッフが待機しており、正面の駐車場ではひっきりなしにお客様が車で出入りしています。
美容室の隣を見ると、カフェ…？
「うちはカフェも併設しているんです。予定より早く着いてしまったとか、あとは子連れのご家族も多いので、そういうお客様にはカフェを利用してもらっています」
カフェの入り口です。サロン内からもカフェに行けます。
渋滞のひどいジャカルタでは、目的地への到着時間が読みづらい。
そのため早く着いてしまったお客様にはカフェでゆったりと過ごしてもらうそう。
「もちろんそういったお客様のご利用だけではないですが、コンセプトの一つとして、ゆったりと心休まるような美容室を目指しているんです」
他に理容室を併設しているのもciel sowalさんの特徴。
やってみると意外と髭剃りのリピーターも多かったり、お客様も順調に増えているそうです。
そう教えてくれたのは後藤さん。
とても物腰柔らかく、落ち着いていて、どんな人とでも親しくなれそう。そんな印象を持ちます。
後藤さんは、福島県郡山出身の29歳。
日本美容専門学校を卒業後、代官山の美容室に勤めます。
その後、委託系の美容室に転職し、24歳で新宿店の店長になります。
転機はそこで訪れます。
「当時、新宿店は別の会社とコラボする形でサロン経営をしていたんです。その時コラボ先の会社から、海外でやらないか？と声を掛けられたのが、海外に出たきっかけです」
ciel sowalさんをオープンするまでの間は、ジャカルタの別の美容室を経営し、美容師・経営者としての経験を積んでいきます。
そして、新パートナーの女性とも巡り会い、ciel sowalさんのオープンに着手。
受付の左手を抜けるとカフェです。
「その出会いも本当にたまたまなんですよ。僕の友達がサッカーをしていたら、日本語をしゃべれるインドネシア人がいるとか言って、話しかけたのがきっかけです。基本的に僕はラッキーな人間なんです（笑）」
そのパートナーは、旦那様が日本人。
幼稚園やアパートの経営、サロン周辺の地主さんでもあります。
とても良心的で、すごくいいパートナーに恵まれたと、後藤さんは教えてくれました。
ただ、オープンするまでの間には、色々と『壁』もあったそう。
海外で働く上で重要なこと、ビザの取得もその壁の一つだったそうです。
「オープン前に、ビザの問題でイミグレーションとゴタゴタがありました。ただ、そういったことも経験できたおかげで、ビザの取得もより慎重になりましたし、もちろん癒着ではないですが、イミグレーションの人たちとも仲良くなりました」
カフェスペースです。ここではお酒や日本食も食べられます。
この時、問題の解決に大きな力を貸してくれたのも現在のパートナー。
今でもとても頼もしい味方だそうです。
またこの経験のおかげで、今では奇跡的なくらい早くビザが下りると、そんなことも教えてくれました。
そして、無事2016年1月にciel sowalオープン。
今では順調にお客様も増え、今年10月にもう1店舗、来年頭にはさらにもう1店舗出店する計画だそうです。
また、新店舗は、東京・銀座を中心に6店舗展開している美容室『Lond』（Lond）と共同出資した美容室です。両社で新会社『PT Desian Pot』を設立し、展開します。
東京とのパイプを作ることでリアルタイムで情報を流通させる。
そうして新しいものをいち早くジャカルタに持ち込んでいくことも一つの目的だそう。
もちろんカフェだけの利用もできます。『Knot7 cafe』の一角。
「Londの代表たちは、委託系の美容室で一緒に働いていたんですよ。日美の先輩でもあったんです。帰国する時は、よく彼らの美容室に遊びに行っていました」
そしてLondは銀座で店舗を拡大、そろそろ海外進出となった時に、後藤さんと一緒にやりたいと言ってくれたそうです。
先に伝えておくと、新店舗の美容室名はLond Tokyoになりますが、勤務店舗はciel sowalさんでもどちらでも選べます。
ジャカルタ2年目で新店舗を展開するのは、他の日系サロンと比べても異例の速さ。
ーーまだ20代の後藤さんはどんなマインドで仕事をしているのでしょうか？
「これもやってみよう、あれもやってみようとブレブレなんですよ（笑）みんながあーだこーだいってくれるから変な方向にブレずにいますけど」
謙遜していますが、要は常にチャレンジしているということ。
それが若くして海外に出ていくことができ、スピード感を持ってビジネスができる理由の一つではないでしょうか。
後藤さんとローカルのアシスタントさん。
ーー今後は美容室をどうしていきたいですか？
「いまお客様の8割～9割が日本人なんです。3店舗目まではそれでも大丈夫ですが、それ以降はインドネシア人をターゲットにするというビジョンがあります」
そのため、初めての海外で英語が喋れなくても問題ありません。
まずはここで海外の環境に慣れつつ、英語を中心とした外国語をマスターしていくという流れだと、これから働く人にとってストレスも低いのではないでしょうか。
そして、インドネシアだけでなく、アジア各地に美容室を作っていきたいと。
「一つの国に集中しちゃうと、国のリスクもありますからね。例えば、90年代にはタイを中心に始まったアジアの通貨危機があって、インドネシアの通貨、ルピアの価値が急落したこともあります」
後藤さんがイメージを伝えて、ローカルのスタイリストさんがカット。
冒頭の言葉は、後藤さんなりの危機管理から出た言葉でした。
インドネシアに囚われず、アジア各国に美容室を作ることで、危機管理と同時に、働く人にとっても都合のいいものにしたい。
好きな国で定住するのもよし。国を転々とするのもよし。嫌なら日本に戻ってもいい。
そういう流れも作っていきたいそうです。
働く人のために、こんなことも考えているようです。
「スタッフが独立すると言ったら、もちろん独立も手伝います。それから、美容師以外に何か他の事業がしたいという希望があれば、副業も禁止していません。そういうのは自分のためにもやったほうがいいです」
職業は１つだけの時代じゃないという後藤さん。
「美容師も2つ、3つ職業があってもいい。美容師が美容師でなきゃいけないのか？って言われたら、僕はそうじゃないと思う」
美容師としての新しい生き方が秘めている可能性を、自分が見せていけたらと。
そう教えてくれました。
ーー後藤さんはどんな方に来て欲しいですか？
「そんなにキャリアがなく、若くても全然いいです。『何かしたい』とか『海外に一歩踏み出したい』とか、志が高ければ。あとやる気と根性」
「僕も20代前半でチャンスをもらい、挑戦させてもらいました。それですごい自分が変わったんですよね。そういうきっかけを今度は僕からあげたいというのもあります」
「それと、これからどんどん会社が大きくなる中で、例えばマネージメント能力に長けてるなど、自分より能力が高い人にも来てほしいですね」
と言いつつも、
「とりあえず、会ってみて一緒に働きたいと思ったら僕は一緒に働きますよ」
もっと美容師も海外に出て、他の言語を習得しつつ、なるべく早いうちから海外経験がないとこの先々生きていけないと、後藤さんは考えています。
次に新店舗の責任者であり、Lond代表の1人小林さんにお話を伺いました。
残念ながら取材時の写真はないので、気になる方は『Lond Tokyo』のHPをご覧ください。
小林さんもとても仲間思いで人当たりが柔らく、素敵な方です。
そんな小林さんは埼玉県出身の32歳。日本美容専門学校を卒業後、原宿のサロンに勤めます。
その後、MINXで7年勤めたのち、28歳で美容学校時代のクラスメイト6人と共同で、Londを設立します。
Londさんは美容業界では珍しく代表が6人いる美容室。
よく「友達と起業するな」とか「決裁権者は1人に」など、会社経営の『常識』のようなものがありますが、Londさんはその逆を行って成功している美容室です。
地価の日本一高い銀座での他店舗展開や、ホットペッパービューティー経由の予約売上総額が多い美容室に送られる賞『HOT PEPPER Beauty AWARD』で、最高賞「GOLD Prize」を受賞するなど、設立4年とは思えない快進撃が続いています。
さらに、従業員第一主義を掲げているLondさんは離職率ゼロを維持しているそうです。
ーー赴任して約2ヶ月。ジャカルタでの生活はどうですか？
「だいぶ慣れましたね。元々海外のどっかで生活してみたいというのはあったので、海外展開することになって、『僕が行く』と即、立候補しました。だから慣れるのは早かったですね。抵抗がなかったというか」
食事の不満もないそうです。
「毎日外食で、屋台の料理を食べていますが美味しいですね。ただちょっと油っこい（笑）ナシゴレンとか」
「屋台に関しては、あくまでも僕の印象ですが、衛生面に敏感な人は少し抵抗があるかもしれませんね」
ジャカルタでの住み心地もいいとのこと。
理容師さんです。お客様もたくさんいらしてました。
「物価も安いですし、住み心地はいいですね。インフラは日本より整っていないですが、僕はあまり気にしないので、住み心地はいいです。日本にこだわる人は、インドネシアに限らず、どこでも不満を感じてしまう思います」
休日は、後藤さんとムエタイに行って汗を流したり、ciel sowalのスタッフさんや、その知人たちと食事をしたりなど、充実した生活ができているようです。
ーー今回の新店舗は日本人がターゲットになるんですか？
「そうですね。まずは日本人がターゲットになってきます。日本人をメインにして、ローカルも何割か取れればと思っています」
ーージャカルタは、他にも日系サロンが増えてきましたが、他社と比べて強みはどこですか？
「日本にあるサロンをこっちに持ってきた同業はいないので、そこは強みだと思います。日本の『旬』をリアルに届けられることですね」
こちらは理容のスペース。なんだか懐かしい光景でした。
東京・銀座で美容室をしているからこそ得られる情報。
ネットではなく、リアルからの情報は確かに武器になります。
ーー小林さんはどんな人と働きたいですか？
「美容が好きで、真面目で、人として素敵な人がいいです。不器用とかそんなのは関係ない。好きだったらいっぱい練習もするし、覚えようとする意欲もあると思います」
技術はもちろん大切だが、技術は伸ばせる。
それよりもその人自身の持っているもの、例えば怠け癖とか。そういう内面を直すのは難しいと。
日本は他の代表5人が業界「1位」を目指し、海外ではジャカルタを皮切りに、小林さんが他の国へも展開したいと、目標を教えてくれました。
これからはLondと共同出資の美容室もでき、新しい空気と日本の流行を『生』で取り込み、ますます勢いを増すciel sowalさん。
お客様のメインは日本人なので、海外へ踏みだしたいが、なかなか一歩が出せない方は、向いているかもしれません。
まずは海外に住み、日本人に対して施術することで徐々に「海外」に慣れていく。慣れてからはいろんな可能性が広がると思います。
これから拡大していく海外ビジネスを肌で感じ、新しい美容師のあり方を一緒に作っていきたい方は、ぜひ応募してみてください。
ciel sowal & Lond Tokyo
社員数
15名
①日本人男性スタイリスト 4名・女性スタイリスト 1名
②ローカルスタイリスト 2名・ローカルアシスタント 8名
平均年齢
26歳
坪数
ciel sowal：53坪
Lond Tokyo：30坪
セット面
ciel sowal：9面
Lond Tokyo：8面
店舗数
4店舗
ciel sowal & Lond Tokyo 合計（barber含む）
お客様年齢層
10〜20代：20%
30〜40代：60%
50代〜：20%
お客様国籍比
インドネシア人：20%
日本人：80%
スタッフ国籍比
インドネシア人：65%
日本人：35%
募集
スタイリスト
雇用形態
正社員
資格
美容師免許
語学力
不問
勤務地
① ciel sowal
JL. Yado 3 BlokB No.1 Radio Dalam Jakarta Selatan 12140
② Lond Tokyo
LT 2 JL.30 gunawarman NO,30 Kebayoran Baru Jakarta Selatan 12110
上記、いずれかの勤務。もしくはジャカルタ内新店舗
勤務時間
① ciel sowal
（月-土）9:00-21:00（日）9:00-18:00
② Lond Tokyo
（月-金）9:00-20:00（土）9:00-19:00（日・祝日）9:00-18:00
給与
Rp,20.000.000〜Rp,60.000.000以上（基本給＋歩合）
約155,000円〜466,000円（2019.11.02時点）
昇給
有り
賞与
有り
交通費
無し
福利厚生
保険料会社一部負担
各種手当
VISA取得費用（全額支給）
休日
毎週火曜日
夏期休暇
6日間
冬期休暇
3日間
その他待遇
有給休暇、社内イベント、住宅探しのサポート
語学レッスンサポート
就職祝い金
10,000円
選考プロセス
下記「問い合わせ・応募」ボタンより応募→
書類選考→面接→採用
